文豪の名前のない猫VS英雄の名前をつけた犬
夏目漱石といえば猫を連想しがちですが、犬も飼っていました。
夏目家の猫は、『吾輩は猫である』の主人公と同じように、代々、名前はないまま。
それに対し、犬(雑種)には「ヘクトー」という立派な名前をつけ、たいそう可愛がっていたようです。ヘクトーとは、ホメロス作といわれるギリシアの叙事詩『イリアス』の英雄Hector からつけられたそうです。
そのヘクトーが病気にかかり入院していたことがあります。
その病気というのがジステンパー。ジステンパーは、致死率が高い病気で、後遺症が残ることも多い怖い病気ですが、現在、ワクチンの普及によって感染する犬は昔に比べて激減しています。
ヘクトーのジステンパーは、幸いにも回復しました。
しかし、ヘクトーは3歳か4 歳の若さで亡くなってしまいました。
その数ヶ月後に書かれた『硝子戸の中』で、漱石はヘクトーについて愛情に満ちた話を残しています。
また、漱石は庭の一角にヘクトーのお墓もつくっています。
『吾輩は猫である』のモデルになった猫のお墓の近く、書斎からよく見える場所につくりました。