昭和初期にかの文豪が提唱した「愛犬家心得」
日本初のノーベル文学賞作家、そして「伊豆の踊り子」や「雪国」
などの作品で知られる川端康成は、無類の犬好きでした。ワイヤー・
フォックス・テリア、コリー、グレイハウンドなど飼っていて、昭和八年
(1933年)には「愛犬家心得」というエッセイまでも発表して
います。川端康成の提唱した愛犬家心得とは……。
一つ。血統書ばかりではなく、親犬の習性を良く調べた上で、
子犬を買う。
一つ。放し飼いをしない。
一つ。犬を訓練所に入学させ、また、犬猫病院へ入院させるにも、
預け先の犬の扱いをよく知っておく。
一つ。一時のきまぐれやたわむれ心から、犬を買ったり、もらったりしない。
一つ。数を少なく、質をよく、そして一人一犬を原則とする。
一つ。犬も家族の一員のつもりで、犬の心の微妙な鋭敏さに親しむ。
一つ。犬に人間の模型を強いて求めず、大自然の命の現れとして
愛する
一つ。純血種を飼う。
一つ。病気の治療法を学ぶよりも、犬の病気を予知することを覚える。
一つ。先ず、牝犬を飼って、その子どもを育ててみる。
一つ。犬を飼うというよりも、犬を育てるという心持をどこまでも失わない。
現在の状況には即さない部分もありますが、放し飼いが当たり前で、
今とは犬に対する考え方が全く違う時代に、とても先駆的な考え方を
していたようです。
川端康成「愛犬家心得」は、『犬クラフト・エヴィング商會』
(中公文庫)で読むことができます。